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キュウちゃんと語ろう 430
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うし〜
《半分》な!щ(゜▽゜щ)
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【空想終着駅】 その12
長い長い海の橋を渡り切るとそこは島だった。
ミステリー列車は島に浮かぶ『終着駅』という名の駅に辿り着いた。
夜の海に浮かぶ小さな島と駅。ポツンポツンと島の中腹に明かりが見える。
空には満天の星と金色の満月。
「ここか。不思議な場所だな。」
「駅名はそのまんまだね。」
乗客たちはあたりを見回しながら次々と降りる。
「一両目の特別列車からは誰も降りてこないな。」
「サァサァミナサン、コチラへ」
車掌に案内され改札を出ると、迎えのバスが来ていた。
クジラのバスだ。
「ジュンバンニオノリクダサイ」
車掌はこのままバスの車掌もするようだ。
「クジラはこの島の名物なのかな?」
そして、満員になったクジラを形取った大型バスは、『恥丘の泉温郷』ヘ向かった。
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【空想終着駅】 その13
バスは古ぼけた温泉施設に到着した。
「トウチャクシマシタ。オツカレサマデス。」
そして御一行は、屋外ステージのある場所へ案内された。
「まずは首からこのIDパスをぶら下げてください。」
イカの面をした案内係が手際よくひとりひとりに配った。
御一行は連なって観客席にゾロゾロと入場した。
「おお、素晴らしい!」
中央にある『恥丘の泉』では、全裸の美女たちがしなやかに体を動かしている。
ぐるっと囲うように作られた仮設の客席から一同はそれを眺めた。
全裸の美女たちは、統一されたダンスではなく、思い思いの動きをしている。
中央ではふたりのダンサーが男女の絡み合いのような動きをし、その横では天に祈るかのようにパフォーマンスをしている。その後ろではバレエのような動き、両端では子供のように水遊びをし、前方では股を開き手招きをする美女がいたりと様々だ。
ときおり客席までキラキラした液体が飛んできた。
「最高だよ」
「俺、出ちゃうかも」
ボルテージは最高潮に向かいつつある。
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【空想終着駅】 その14
美女の手招きに魅せられた客のひとりが、円形に造られた泉の中にザブンッと飛び込んだ。
やがて上空から一羽の黒い鳥が急降下してきたかと思ったら、大きな音をたてて再び上昇していく。
鳥には目をくれず、さらに別の客が泉に飛び込もうとしたその時、
すり鉢状になってる屋外ステージと客席を覗き込むかのように、黒い夜空に大きな“手”が出現した。
「なんだ、あれは!巨人の手か?」
「演出か、いや違う、ステージが破壊されているぞッ」
驚いた観客たちは腰を抜かし、全裸のダンサーたちは逃げようとして慌てふためいた。
もはや会場はパニック状態だ。
巨大な手は何かを掴もうと、空から目の前の『恥丘の泉』に近づいてきた。
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【空想終着駅】 その15
ひとりの客が夜空に突然現れたその「巨大な手」捕まえられた。どこかに連れ去られようとしているのか。
腰を抜かした観客は身動きできない。
金髪のダンサーのひとりがステージを照らすためのスポットライトを空に向け、その『巨大な手』にライトを当てた。
「アレは何だ、」
「ウ、ウロコだ」
その手は緑や青に光るウロコに覆われているように見えた。
その時だ、
ステージの向こう側にある空に花火が上がりバーン!と大きな音を響かせた。
花火は何発も上がり、夜空を明るくした。距離が近く、客席にも花火のカスがたくさん落ちてきた。
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【空想終着駅】 その16
巨人が花火に驚いたのか、その“巨大な手”から人間がすり抜け泉の中央に落ちた。
しかしその手は再び捕まえようとする。何度も何度も繰り返すが、なかなか人間を捕まえることができない。
やがて上空から声が機械仕掛けの声が聞こえてきた。
『コレガアナタノシンノスガタデス』
次は巨人の声が響き渡る。
『バカヤロウ、どんなからくりだ』
正八胞体の箱の中に作られたイベント広場にその声がこだました。
「何が起こっているんだ?」
観客たちは腰を抜かしたまま戸惑った。
全裸ダンサーズは次々とスポットライトを手に取り上空に当てた。
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【空想終着駅】 その17
強い風が吹き、空に向かって砂埃が噴き上げると、恥丘の泉の水面が強い風の影響で波を打った。
無数のライトが巨人を照らす。
長い爪のある5本の指、その左右の手が観客席の上で何かを掴もうとしている。
表面のウロコがライトを反射して赤や青に光る。
無数のスポットライトがさらにその上の巨人の身体を照らす。
顔は花火の煙でよく見えない。
メッキのように光る巨体が揺れている。
正八胞体の箱が傾き出したので、観客やダンサーたちは必死に座席や手すりにしがみついた。
ドサクサの中、エロ本の行商の顔の上に美女の尻が上手いこと被さる形となった。なんという幸運なのだろうか。
しかしそんな幸運を感じている余裕などあるはずもなかった。
恥丘の泉の底から勢いよく生ぬるい温泉が噴射して会場を水浸しにする。
「配管が破裂したのか?」
「おいおい!」
人々はしがみつくしか術がなかった。
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【空想終着駅】 その18
舞台監督のシンが舞台袖から様子を見ていた。
……ずいぶんと派手にやってくれたなぁ
鮫鯨芸能事務事所のジョーはバスタオルを巻いた女性ダンサー達から何やらクレームを受けている。
リーダーだろうか、ベテランダンサーのひとりがファック!と叫び怒りを露わにしている。
崩れかけ水浸しになったステージが再開した。
巨人だか怪獣だかよくわからない大きな
“モノ”は動きを止め、上の方から正八胞体の箱の中を覗いている。
まるで大きな子供が水槽の中を覗いているようだ。
腰を抜かした観客たちは客席の一番後ろにある狭いスペースに身を潜め、僅かな隙間からステージの続きを見る事にした。
しばらくするとスピーカーからファンファーレの音がした。
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【空想終着駅】 その19
水浸しのステージは少し傾きかけたが、裏方の宇宙ブルマ軍団の素早い動きにより再び整えられた。
黒い羽根を付けた悪魔コスプレ姿の司会者のジョーがマイクを持って舞台に現れた。
「さぁ、役者は揃いました!」
「The Show Must Go On !」
思い思いの衣装を身に纏ったダンサー達が歌い出した。
♪
show must go on(舞台は続く)
Inside my heart is breaking
(悲しみのどん底でも)
My make-up may be flaking
(仮面が剥がれて素顔が現れようと)
But my smile still stays on
(僕は舞台の上で微笑み続ける)
My soul is painted like the wings of butterflies
(僕の魂は蝶のように七色に彩られ)
Fairy tales of yesterday will grow but never die
(去りし日は伝説となり色褪せない)
そして無数のスポットライトが一斉にダンサー達が舞う舞台を照らした。
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【空想終着駅】 その20
そして舞台袖から一人の男がステージに登場して歌い出した。
彼が主役のようだ。
♪
The show must go on
(ショーは続く)
I'll face it with a grin
(最高の笑顔を浮かべ)
I'm never giving in
(決して屈しない)
On with the show
(このショーと共に)
I'll top the bill,I'll overkill
(主役は僕だ、どうなろうとも)
I have to find the will to carry on
(演じ続ければ分かる事がある)
(On with the show)
The show must go on...
観客たちは歓声を上げ次々と拍手をしながら立ち上がると、一斉に額に埋め込まれているスマートライトを空に向かって照射した。
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【空想終着駅】 その21
観客たちが一斉にスマートライトを使い空にある巨獣の顔を照らしたが、巨獣は眩しさから両手で顔を隠した。
すると舞台の奈落の底から黒光りするオープンカーに乗った女王様が上昇してきた。
観客たちが一斉に舞台を注目する。
そしてオープカーに乗った女王様が歌い出した。
♪
今から100年前
マリリンモンローというシネマスタア
に出会った
彼女の魂が私に乗り移って
私をつき動かすの
私は自由でいたいから
こうして舞台の上に立つ
着飾るために服を脱ぎ
素顔になる為に化粧をするの
小さな浮かぶ島へようこそ…
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