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キュウちゃんと語ろう 430

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うし〜
《半分》な!щ(゜▽゜щ)

920

【空想終着駅】 その22

水浸しの会場の半円形のステージは、海に浮かぶ小さな島のようだ。

観客たちは上段の席に集まっていた。

奈落の底から上昇してきた女王様がオープンカーの運転席に立ち、羽織っていた狼の毛皮のコートを脱ぎ捨ると、ハイレグ水着のようなコイル式宇宙ブルマの姿になった。

「おぉぉぉ」

観客たちは感嘆の声をあげた。

壮大な音楽は続いている。

主人公らしき男が女王様に近づき視線を合わせると、その男は両手を広げて再び歌い出した。

The show must go on...
(さぁ再び始めよう!)

その時だ、夜空に激しく稲妻が光り、中を覗き込もうとしていた巨獣が雄叫びを上げて振動を起こした。

その雄叫びは、「目、目をやられタァー」と言っているように聞こえた。

また別の者は、「なんダッ、この光は!」と聞こえたようだ。

またある者には、「何しやがるんダァ」と聞こえていた。

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【空想終着駅】 その23

インカムを付けたヒーローとヒロインは、島のように浮かんで見える舞台の中央で見つめ合った。

・・・・
(今から約2時間前)

四両編成の筒型の列車が終着駅に辿り着いた。乗客たちは次々と降車していく。
他の乗客たちの姿が見えなくなると先頭の特別車両の平行四辺形の扉がスッーとスライドして開いた。

光沢のあるグリーンにペイントされた外装、内側は白を基調とした装飾の特別車両のその風景は、まるで竹を斜めに割ったようだった。

「少し不安だわ。」

「大丈夫、うまくやれるさ。」

タケとリカは立ち上がった。

木造の駅のホームでクジラ社長と新しいマネージャーが出迎える。

「長たびおつかれさま!遥々よくお越しくださいました。実に久しぶりだね。」

クジラ社長は上機嫌だ。

新しいマネージャーのフクロウ君がキャリーバッグをゴロゴロと運び出した。

「積もる話もあるけれど、列車の到着が遅れてとにかく時間がない。まずはゆっくり温泉でも言いたいとこだが、さっそく現地に向かうよ。」

駅を出ると、クジラ社長は高級セダンを自ら運転して二人を会場まで送迎した。

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【空想終着駅】 その24

彼らを乗せた車は山の中腹にある温泉郷へ入った。

『ようこそ恥丘温泉郷へ』

と書かれた少々色落ちした巨大なグジラ型の看板が目に入る。

「この郷は10年前、私が買い取ったんだよ。まぁ事業の多角化ってわけだよ。あれから10年かぁ。」

ハンドルを握るクジラ社長は感慨深げに語る。 

「あの建物が会場だよ。」

「わぁ、なんか斬新な形の箱ね。」

「これは去年オープンさせたんだ。」

好奇心旺盛なリカは、長旅の疲れを感じさせずワクワクしている様子だが、タケは全くの無表情だった。

車はそのまま建物の裏口へ向かう。

途中、駐車場に設置されたテントで、多くの人がイカの面をした係員の話を聞いているのが見えた。

車が通用口の前に横付さると、待っていたスタッフが扉を開けた。

「どうぞ、こちらへ。」

クジラ社長に案内され、タケとリカ、そしてショルダーバッグとキャリーバッグを引きずるフクロウ君が続いた。

そして彼らは、監督のシン、演出のジョー、舞台デザインの万田が待つ部屋に案内された。

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【空想終着駅】 その25

「これが契約書です。事前に送付していた仮のものと同じです。問題なければサインを。」

なぜか悪魔コスプレ姿のジョーが契約の説明をした。

「二人の姿を見るまで半信半疑だったよ。本当に来てくれるのかって。」

クジラ社長は終始ご機嫌だ。

「最初はね、断わるつもりだったけど、タケくんとシンさんがすごく熱心に誘ってくれたし、タンバリンはあんな事になっちゃうし、、。でね、よし、いっちょやったるかってね。」

あれから10年もの月日が流れたとはいえ、リカの表情は相変わらず美しく生きき生きしていた。

そして契約書にひととおり目を通した二人は契約書にサインをした。

向こうのテーブルでは、監督のシンちゃんが差し入れのプロット煎餅をバリバリと食べている。 

「事前に脚本も読み込んでオンラインで練習を積んできたとはいえね、ぶっつけ本番のステージでしょ。もう任せられるのは君たちしかいないよ。」

打ち合わせ用の書類を渡しながら、社長の右腕であり、舞台演出も手掛けるジョーが笑顔でそう言った。

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続き 【空想終着駅】 その26

・・・・
(再び舞台のシーン)

曲が終わると主人公らしき男と女王様が空の同じ方向を見た。

The show must go on!

舞台上の宇宙ブルマダンサーズも共に叫
んだ。

舞台は炎の色になり、ダンサーズがあっという間に黒いオープンカーをバラして撤去し、運転席だけが取り残された。

ウッドベースが旋律を奏でる。

主人公らしき男のタケは、その席にあっという間に縄で縛り付けられた。

そして底の厚いブーツを履いた宇宙ボンテージ姿の女王様がカツカツと近づき、男のアゴを掴んだり、人差し指で体をなぞったり、鼻を首筋に近づけたりと、男を弄びながら身体で表現をした。

舞台の上に卵型の大きなふたつの目が現れた。全体がぼんやり光っている。

「あれが巨獣の目か、、」

観客席にいた旅人が呟いた。

女王様が身につけていた宇宙ボーンテージを自ら脱ぎ捨て、見事なバストを披露した。

「素晴らしい!」

後方で宇宙ブルマ隊のポールダンスが始まると、椅子に縛られたタケが叫んだ。

「俺を解き放て!」 

ウッドベースの太い弦が弾け飛ぶ。

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【空想終着駅】 その27

「俺を解き放て!」 

椅子に縛り付けられたタケが叫ぶと、女王様はタケの左右の太ももの間に右足のブーツの底をガンッと乗せ、顔を睨みつけ、右手に持ったムチを床に叩きつけてバチッと音を鳴らした。

「解き放てだぁ?まだ契約が残ってるじゃない。」

女王様はそう言うと、胸元からナイフを取り出して刃先にキスをした。

「お遊びはこれからよ。」

そして彼女は、後ろに束ねられた自分の長い金髪をそのナイフを使いバッサリ切り落とした。

「随分な切れ味ね。」

彼女は切り落とした髪を紐で束ね、半裸のタケの身体に焦らすように這わせて反応を楽しんだ。

「どこが気持ちいいのかなー」

「うぅ、早く俺を解いてくれ」

「じぁお望み通り解いてあげましょう」

そして彼女は切れ味の良いナイフで縄を切り始めた。

「大人しくしてなさーい」

男を縄から解放した女王様はムチを持ち上げ、彼の背中を軽く叩いた。

「さあ、四つん這いになりなさい。」

彼女は先ほどのポニーテールの束を男の尻にぶっ刺した。

「あなたは私の馬よ。」

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【空想終着駅】 その28 

リカ女王様はタケに騎乗し、右手に持ったムチでタケの尻をパチンパチンと叩いた。

「さあ、走りなさいッ!」

ウッドベースのリズムが次第に早くなっていき、馬になったタケはパッカパッカと天を駆け、甲高い声を上げた。

ひひひひーん!

「…どこかで見た風景だ」

観客の旅人が脳内スマホで呟くと、離れた場所で見ていたエロ本売りが、

「…あれはお蔵入りになった官能小説エロティカセブン改のワンシーンの再現では?」とレスポンスした。

ベース音が突然止まり舞台が暗くなる。

そして、舞台袖からロボットの動きをするひとりの男がコミカルに登場した。

「コンバンワー、ワタシのナワ、タンバリン2号デス」

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【空想終着駅】 その29

「コンバンワー、、」と言いながら、コミカルなロボットの動きで登場したタンバリン2号。

・・・・

裏のモニターでは演出のジョーとクジラ社長がその様子を見つめる。

「やはり初舞台とあって動きもセリフもガチガチじゃねーか。」

「社長、ロボ人間を演じているのだからあれでいいんですよ。」

「そりゃそうだな、ガッハハハー」

社長は、元リカのマネージャーをしていた男の初舞台の様子にご満悦のようだ。

「しかしなー、あいつがリカちゃんと駆け落ちしたと聞いた時はそりゃ驚いたもんだが、あんな事になって再起を目指してシンちゃんの下で役者を目指していたとはなー、こりゃ愉快だよ。」

「社長、あんまり笑ったらダメですよ」

「シンちゃんとジョーの配役は流石だよ。ガッハハハ。」

その向こうでは、総監督のシンと背景画の色を塗っていた美術の万田が会話をしていた。

「この煎餅、美味いぞ。どうだ?」

「もうすぐ仕上がるから後で頂くよ。」

・・・・

「ワタシはタンバリン2号。イチド、ニンゲンノ命をウシナイマシタガ、シンピノチカラ二ヨリ、ヨミガエリマシタ。

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【空想終着駅】 その30 

タンバリン2号がコミカルなロボットダンスを披露していると、上空を旋回していた太った鳥が勢いよく降下してきた。

鳥はガバッとタンバリン2号の頭を鷲掴みにし、そのまま顔だけを引きちぎり、もげた顔を掴んだまま急上昇、そのまま空の彼方に消えていった。

突然の出来事に唖然とする観客たち。

顔が無くなったタンバリン2号の首からは、配線コードや鉄製の骨や部品がなどが剥き出しになった状態に。

それでもロボ人間の彼はコミカルなダンスを続けた。

あまりにもシュールな光景だ。

「こ、これが宇宙世紀の舞台か…」

「ここまで進化したのか…」

女王様は顔が無くなったタンバリン2号の手を取り抱きしめた。

スピーカーからカラオケが流れ出すと、舞台の端で馬になったまま放置されていたタケが歌い出した。


傷ついた友達さえ
置き去りにできるソルジャー
あなたの苦しさを私だけに
つたえていってほしい…

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【空想終着駅】 その31

タケノ馬によるカラオケの熱唱が終わる頃、舞台の端からものすごくいい匂いがして立ち込めてきた。

宇宙ブルマ隊が熱々の大きな鍋を台車に乗せて運んで来た。

そして、大型扇風機が回転し、その鍋のいい匂いは客席まで運ばれた。

「いい匂いだ。」

「とびきりのスープみたいだ。」

蝶ネクタイをした司会役のジョーが再びやって来てマイクの前に立った。

「紳士、淑女の皆様、只今から人類最後の晩餐会の始まりです。まずはこの素晴らしい濃厚なスープの香りをご堪能ください。」 

スープの次は神秘貝の網焼きショーが始まり、香ばしい醤油の匂いが会場に広がった。

「おい、おい、匂いだけ?」

「俺たちゃここでいい匂いを楽しむだけなのか?」

「こりゃ拷問に近いよ。」

客席がザワザワする。

「心配ご無用です。ドアップ画像を転送しまショウ。」

そして客たちの脳内スマホに「アゲアシドリの骨から取った出汁」の画像、「醤油をかけジュワッと焼かれる神秘貝」の画像、「マグロの頭の照り焼き」の画像など、舞台に出された美味しそうな匂いの料理のドアップ画像が次々と送られてた。

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