侮辱罪巡る国会論戦
2022年5月11日

　政府案は「拘留３０日未満または科料１万円未満」となっている現行の法定刑に「１年以下の懲役・禁錮もしくは３０万円以下の罰金」を加える。ネット上の誹謗中傷が社会問題化する中、厳罰化で抑止力向上につなげる狙いがある。衆院法務委の参考人質疑で一昨年にＳＮＳ上で中傷を受けて亡くなったプロレスラー木村花さんの母響子さんは「言論の自由に重きを置くならそれに見合った責任を伴わせてほしい」と訴えた。
　立民などが問題視するのは法定刑の上限が懲役に引き上げられることにより、拘留または科料の場合は出頭の求めに応じない時などに限られる逮捕が広く可能になることだ。街頭演説でやじを飛ばした人が現行犯逮捕されるなども可能になると懸念を示す。

　立民の対案は電子メールやＬＩＮＥなどを使った少人数の中での誹謗中傷も対象とする「加害目的誹謗等罪」を新設。法定刑を拘留または科料にとどめ、公共性や真実性がある場合は罰しない特例を設けることで政治家への正当な批判に対する処罰を防ぐとする。一方、自民側は「公然ではない侮辱も規制対象となり、かえって表現の自由が制限される」と主張する。