実験小説【うほっ　いい男（18）】とは、
【シンタケトリカ】【シンタケの2巻】【シンタケの3巻か】【四巻の物語】【シン5巻ですよ】【第六感シックスセンス】【Em7イーマイナーセブン】【ハチのミツの頃】【マサカノキュウカン】【廻るぅ十巻】【大11巻】【題12環】【13番】【14番目の本】【15番目の壊】【最終章（16）】【最終章　第二部】続いている巨匠倍満汁先生の作品シリーズの最終巻です。

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「空想モンブラン」　その7

「私はアレの遣いです。アナタノイシキと申します。あなたにお願いがあってここまで来ました。何かのセールスではありません。
」

女は部屋に入るや否や早口で話した。

ホウホウ

吸い込まれそうな綺麗な瞳だ。

「アナタノイシキ？ずいぶん奇妙なネームだね。」

「奇妙ですって？それは貴方の意識がそう判断しただけですよ。」

なんかだかややこしい話になりそうだ。

「で、お願いとは？」

「ちょっとばかり、貴方のその頭を貸して貰えないでしょうか？」

ホウホウ

「貴方が投げた卵がトリガーとなり、群衆が宮殿へ向かっている事を私どもは知ってます。別に貴方に何かしらの罪があるわけではありません。しかしご覧のとおり、貴方の行いが何かを引き起こしているのです。その原理を知りたいというわけです。」

ホウホウ

「突然何を言いだすかと思ったら俺の頭を貸してくれだと？正気で言ってるのか？」

アナタノイシキの名乗る女は俺の剥き出しになった頭の中を覗き込み、「複雑な構造をしているかと思ったら、まるで分からない構造ね。」と言った。

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>>51

「空想モンブラン」　その8
ーーー
どれくらいの時間が経ったのだろうか。俺たちはベットの上で話し込んでいた。

「ラインを超えた、超えてないってそんなに重要なことなの？」

「そりゃそうだよ。ミリ単位の事で世界がガラッと変わるんだからね。」

「じゃあもしあなたの投げた生卵があと数ミリズレていたら？」

「全く違った顛末になっただろうね。」

「例えば？」

「そうだなぁ、その結果、ボールが落下する場所がずれて、転がった物が林檎ではなく蜜柑や栗になっていたかもしれないし、転がる方向やスピードが変わって群衆は宮殿ではなく駅や沼地に向かっていたかもしれない。」

「なんほどね、分かりやすいわ。」

「あるいはボールはバットに当たらず何も起こらなかったかも知れない。そしたら君はここ来る必要もなかった。」

「で、私があなたと最高のセックスをすることもなかった。」

「そういうことになるかな。」

そして俺はアナタノイシキと名乗る女にに言った。

「君がそこまで望むのなら俺の頭部をレンタルしてもいいかなと思い始めているよ。」

「空想モンブラン」　その9

しかしそう言いかけた時、既に彼女は剥き出しになった俺の脳内スマホから、手際よく組み込まれた思考回路を取り外していた。

「何が起こった？」

そしてアナタノイシキと名乗る女は「俺の意識」を特殊なケースの中に収め、その代わりに別の回路を剥き出しになったままの脳に埋め込んでいた。

さっきまで俺であったはずのそのカラダはあっという間に猿と化し、シンバルを手に持ち小刻みに叩きながらケラケラ笑い出し、初期化されたそのカラダは部屋の中をグルグルと歩き出した。

アナタノイシキは俺の意識をカバンに詰むと足早に部屋を後にする。

「ホウホウ、いってらっしゃいませ。」

どこへ運ぶつもりなんだ。

バイクのエンジン音がビルとビルの間を抜けて行った。

「空想モンブラン」　その10

爆発的に人口がシュリンクしている世界の中で、この建物はずいぶんと広すぎる。

俺の意識はアレ社の研究施設のとある一室に運ばれていた。

「身体」という名の本体を有せず、頭脳としての機能である「頭脳回路プラグ」だけの状態になっている「俺」は、特殊ケースの中で厳重に保管されていた。

（俺は何も許可してない。誰が何の権限で行っているんだ）

時は経過していく。

やがてその部屋へ冷凍保存された遺体が運ばれてきた。

それには「1819・タケル」と表記されていた。

「彼は先の戦で大半を失った調査部隊の一員でした。『貴方の意識』は彼の一部として埋め込まれ、今ここで蘇るのです。」

ハッと目を覚ますと小太りの中年がこう言った。

「地球防衛軍へようこそ」

「空想モンブラン」

◾️完◾️

>>74
地球→恥球