自ら試合の流れを手放した。高木がいきなり自滅した。初回１死から鳥谷、江越に連続四球。４番・福留に１ボールからカットボールを左中間へ運ばれ、適時二塁打で２点を献上した。「慎重になりボールが先行してしまった。四球がダメと分かっていて出すのは技術が足りない」。内海、田口の好投で連勝して迎えた第３戦。制球に苦しみ、同一カード３連勝を逃した。
　阪神戦は今季２戦２勝だった。だが３回２死一塁ではゴメスに右中間への２ランを被弾。外角直球を完璧に捉えられた。今季最短タイの３回４失点で７敗目。「悪いところが全部出た感じです」。当初、予定されていた球宴後まで登板機会がないことによる登録抹消ではなく、再調整による２軍降格が濃厚になった。
　この試合にかけていた。今回は中７日。登板４日前の練習でシーズン中としては異例の１０４球の投げ込みを行い、３日前もブルペンでキャッチボール。通常、登板間の投球練習は一度だが、２日前の５日もブルペンに入って“３連投”で準備した。
　高木「ブルペンに入らないとうまくならないので。周りは全員プロ野球選手。自分くらいのレベルでは、少しでもうまくならないと生き残れないんです」

　危機感を胸に臨んだが、５試合白星なし。由伸監督は「結果が出ない中で考えてやっているんだろうけど。使っているこっちの責任じゃないかな」と話した。
　高木は３回先頭で打席に立ち、４回から降板した。村田ヘッドコーチは「延長戦を考えたら野手がコマ不足になる」と代打を送らなかった理由を説明した。最近３カード８試合で１４得点、１試合平均１・７５点、今季７９試合中５２試合が３得点以下と味方打線が苦しい中、序盤の４失点は重すぎた。
　投打がかみ合わず、屈辱の１安打完封負け。首位・広島とは１０ゲーム差に広がった。「いいところを出せるようにやっていきたい」と高木。前を向いてはい上がるしかない。

　先に点を与える。四球を出した後に適時打を許す。高木は先発投手としてやってはいけないことを初回に２つもやってしまった。点の取られ方が最悪だ。粘られた末に根負けして四球を出してしまうのは、制球に自信がないからだ。
　体が前に突っ込むゴメスは内角に死角があるのに、腕が最も伸びる外角に投げてしまう配球の悪さもあった。３回での降板は当然だ。先発投手のふがいない投球は、攻撃陣の戦闘意欲もそいでしまうことを、もっと考えてもらいたい。
　スライダー、カットボールには目を見張るものがあるのに、甘く入ったり、高かったりで、せっかくのいい球を使い切れていなかった。
　それ以上目に付いたのは、球種の変わり目の球のコントロールの甘さだ。同じ球種の球を続けた時の２球目は、いいところに行くのだが、球種を変えると、変えたその球が甘くなる。こういうタイプの投手は、球種を変える時に、より強い意識を持って制球しないと、同じ失敗を繰り返す。
　マウンドに上がって投げてみないと、その日の状態が分からないのでは先発投手として使いづらい。

　巨人の高木勇人投手（２６）が８日、Ｇ球場で異例の“降格即猛練習”を行った。
　７日の阪神戦（東京Ｄ）で３回４失点でＫＯされ、再調整のため２軍降格。午前７時頃に現地を訪れ、９時３０分からの２軍全体練習に参加した。
　登板翌日は通常、軽めのランニングなどで疲労回復に努めるが、両翼のポール間ダッシュや投手―捕手の距離で傾斜を使わずに捕手を座らせて投げるフラットスローなどのメニューを消化。「間違いなく、しっかりやらないといけない。うまくならないといけないので」と再昇格へ向け気合十分だった。

　７日の阪神戦（東京Ｄ）で３回４失点でＫＯされ、再調整のため２軍降格。登板翌日ながらダッシュや強めのキャッチボールなど猛練習をこなし「うまくならないといけないので」。

使えない

　２、３軍が休養日だったＧ球場では自主練習に来た高木勇と大江が汗を流していた。約４０メートルの距離で相手を座らせてのキャッチボールでは、制球力をつけるために自分たちが審判となって判定を下していた。そんな中、フルカウントから高木勇が投げ込んだ１球に対し“大江球審”は「ボール！」と力強く宣言。先輩右腕は「えー！　これはマジで難しい」と後輩の厳しさにうなだれていた。

クビね

　ドラフト会議まで残り１週間。Ｇ球場の室内練習場で高木勇がアマ時代の“苦い思い出”を振り返っていた。「僕は高校３年の時と社会人になって５回、１２球団全部の調査書を書いたんですよ。でも指名漏れで…。その次の年も５球団の調査書を書いて、指にタコができるかと思いましたよ！」とヒートアップ。隣にいた新人・池田は心なしか、少し冷ややかな視線を送っていた。